【書評】RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる

「不確実性の高い現代では、様々な分野での経験が力になる」一万時間の法則やグリットがもてはやされている現在に一石を投じる一冊。

書籍紹介

【タイトル】RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる

【著者】デイビッド・エクスタイン  解説 中室牧子  訳 東方雅美

この本は、卓越した成績を残した二人のスポーツ選手の紹介から始まる。

生後7か月でパターを引きずって歩くようになり、2歳になる頃にはクラブを使ってボールを打っていたタイガーウッズ。

コーチだった母親からは教わることなく、サッカーや水泳など様々なスポーツを経験した結果、最終的にテニスを選んだロジャーフェデラー。

幼少期からゴルフ一本だったタイガーウッズと、ある種「遠回り」といえる経験をしたロジャーフェデラーだが、どちらもそのスポーツ界においてトップであることに変わりはない。

現代の社会を生きる私たちにとって、目指すべきなのはどちらか。

本著の要約・抜粋

「専門特化」の弊害

「早期の専門特化」や「一万時間の法則」で結果を出せるのは、チェスや囲碁などのボードゲームや、ゴルフなどの同じパターンが繰り返し現れるものに限られるという。

ルールが不明確かつ不完全で、正確なフィードバックが得られない「意地悪な世界」では、経験はむしろ間違った学びを強化してしまう。

さらに、専門家は専門家であるがゆえに、視野が狭くなってしまうことがあるそうだ。「意地悪な世界」でも経験を重ねるごとに自信はつくが、それが危険な状況だということには気づかない。

また、専門特化が進むにつれて、「並行溝のシステム」ができてきているという。それは、誰もが自分の溝を深く掘り続けることに専念しており、もしかしたら、隣の溝に自分の抱えている問題の答えがあるかもしれないのに、立ち上がって隣を見ようとはしない、ということだ。

求めるべきはマッチ・クオリティー

私たちが求めるべきはマッチ・クオリティー(その仕事が自分に合っているかどうか)の向上だ。そして、そのマッチ・クオリティーはあらゆる選択肢を試してみることで得られる。画家のファン・ゴッホは、教員になったり牧師を目指したりして、最終的に画家として成功を収めたのだ。

マッチ・クオリティーを向上させるためには、今までと違うことをしなければいけない。当然、スキルの取得の遅れについて不安に思うこともあるだろう。だが気にすることは無い、適性と情熱があれば、マイナス分は簡単に取り返せる。

自分の適性を探るために、適性検査を行っている人もいる。が、ロンドン大学ビジネススクールの教授であるハーミニア・イバーラは言う。

「自分の強みを見つけるためのツール類(ストレングス・ファインダー)は、自分がこれから成長し、進歩し、才能を開花させ、新しい何かを見つけることを全く考慮に入れずに、自己分析をさせようとする。それでも、人は答えが欲しいので、こうしたフレームワークはよく売れる。それに比べて、『何かを試して、何が起こるか見てみよう』と打ち出すのは難しい」と。

あなたのレンジを広げよう

自分にとって最適な場所にたどり着きたいのならば、実験の旅に出なければいけない。多くを学び、経験し、自分にとって何が大切なのか見極めなければいけない。他人と比べて「後れを取った」と感じることもあるだろう。だが、比べるべきは他人でなく過去の自分だ

ディース・キーン・サイモントンのクリエイティビティの研究によると、優れたクリエイターは生み出す作品が多ければ多いほど、失敗作が増えていき、同時に画期的な作品を生み出す可能性も高まるという。

遠回りをしながら実験を重ねる「遅めの専門特化」は、自分の適性を見極め、力を最大限に発揮するために必要なことである。

書籍情報

【書籍名】RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる
【著者名】デイビット・エプスタイン
【出版社】日経BP
【出版日】2020/3/26
【頁 数】448ページ
【目 次】
第1章 早期教育に意味はあるか
第2章 「意地悪な世界」で不足する思考力
第3章 少なく、幅広く練習する効果
第4章 早く学ぶか、ゆっくり学ぶか
第5章 未経験のことについて考える方法
第6章 グリットが強すぎると起こる問題
第7章 「いろいろな自分」を試してみる
第8章 アウトサイダーの強み
第9章 時代遅れの技術を水平思考で生かす
第10章 スペシャリストがはまる罠
第11章 慣れ親しんだ「ツール」を捨てる
第12章 あなたのレンジを広げよう

私がこのテーマに関心を持ったのは、ソーシャルメディアの記事からカンファレンスの基調講演までが、早めの専門特化こそがうまく生きるためのコツであり、様々な分野での経験や実験という「無駄な時間」を削減できると訴えていたからだ。こうした議論に、本書で一石を投じたいと思った。無数の分野の研究が示しているように、あちこちに寄り道をしながら考え、実験するほうが、特に不確実性の高い現代では力の源になる。

本著 (「おわりに あなたのレンジを広げよう」より)

RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる

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